細い脇道に入ると、祭りの音が少しだけ遠くになった。
騒がしさを背中に聞いて、千鶴は民家の間を抜ける。

この先には河原があって、大橋を渡れば花火の打ち上げ場所になる。
一般の人は近付けないが遠目に眺めることは出来た。
ここは、知る人ぞ知る穴場であった。
しかし、花火に近いこともあって警備は厳重。
もちろんその警備をしているのは新選組である。

ドンドン、とすでに上がり始めている花火を見ながら、大橋へと向かう。
細道を抜けると、視界はいっきに開けて広い河原通りになる。
祭りの通りとは離れているため、人もちらほらといるだけだ。

千鶴は大橋を渡ろうと下駄を鳴らす。
と・・・・
ポツと何かが頬に当たった。
指で触れると、それは水滴。
見上げるとポツポツと次々に落ちてくる。

「雨・・・?」

しかし周りの人は急ぐわけでもなく、花火も普通に打ち上げられている。
黒い空を見上げても、特に暗い雲があるわけではない。

「通り雨かな?」

ポツポツと降る雨。
大橋を渡れば向こう側には屋台があった。

「お譲ちゃん、雨宿りしていきな。」

声をかけられて振り向くと、食屋の暖簾からおばさんが顔を出して手招きをしていた。
店の中は繁盛しているらしく、通りの静けさに比べて騒がしかった。




「じゃあ、雨宿りをさせてもらいます。」→


「このくらいの雨だから、大丈夫です。」→