第六話
よく晴れた日の午後。
政宗とは、甲斐に到着した。
「伊達政宗殿!よくぞ参られた!お待ちしておりましたぞ!」
城に入るなり盛大に歓迎してくれたのは、六文銭の家紋を背負う男、甲斐の若き虎。
「あ!!!」
有名なその家紋を目にして、は声を上げる。
よくテレビで取り上げられて、日本にもファンが多いとされる真田幸村。
その彼が目の前にいる。
は顔を赤らめて、口を開いたまま立ちすくんでいた。
「?・・・・こちらの御仁は?」
「た、た、た、高須と申しまするです!」
「ぶっ!くくくくく」
変な敬語を使うに、政宗が笑う。
「、殿でござるか。某は真田源次郎幸村!お初にお目にかかり申す!」
「あっ、よ、よろしくお願いしまするです!」
「ぶははははははは!」
「ちょ、政宗さま、なんですか、笑わないでくださいよ!」
こそこそと小声で言うに対して、政宗は目に涙を浮かべて笑っている。
「くっくっくっ、何だその言葉は。緊張しすぎだっつんだよ。くくく」
「幸村さん!あの・・・あ、会えて嬉しいです、私・・・・!」
「・・・?そうでござるか?・・・いや、某も、殿に会えて嬉しいでござる。」
そう言って、幸村はニコッと笑う。
いい人!
ぱ〜っとの表情が明るくなる。
「好きなだけここにいてくだされ。もとはといえば、某のわがままで、甲斐まで足を運んでもらったわけでござる故。」
「ありがとうございます!幸村さん!」
「はー、笑った・・・・・・」
それにしても・・・・なんだかやけに、打ち解けんのが早えな、この二人。
笑い合う二人の様子を、腕を組んで見ていた政宗は、少し不機嫌になる。
・・・つか、のやろう、俺に対する態度と随分違くねえか?
そんなに俺の傍は嫌か?
「・・・・・It is unpleasant(気に入らねえな)・・・・おい、真田幸村。さっさと獲物持ってこい。そのために、わざわざ来てやったんだからな。」
「承知!しばし待たれよ!」
日が傾き始めた頃、政宗と幸村は相対して、城の中庭にいた。
と佐助は縁側に座って、その様子を眺めている。
ここの城主、武田信玄は所用で城を空けているらしく、「明日には帰る予定」と佐助が教えてくれた。
「・・・木刀ですか、あれ。」
「うん。結構痛いんだよね、あれ。」
「ぶつかったことあるんですか?佐助さん」
「え・・・ぶつかったってゆうか・・・・」
なんか、その言い方変じゃない?
まあ、いいか・・・。
「痛いよ。青あざもんだよ、あれ。」
へえ〜、と言いながらは顔をしかめる。
そんな世間話をしてる間に、二人の手合わせは始まっていた。
カン、カン、と木刀同士がぶつかり合う音が響く。
互角の戦いだ。
「・・・・」
いきいきとしている二人。
その瞳は、同じ輝きを持っている。
の、好きな輝き。
あの輝きに強く惹かれる。
真剣に二人の戦いを見ていると、その顔を佐助が横から覗く。
「・・・・・・ちゃんさあ。」
「え?」
急に話しかけられて振り向くと、佐助がこちらを見ていた。
「・・・・好き、なんでしょ?」
「・・・・・」
よくわかるな〜佐助さんてば・・・
「はい。好きです。あの目、すごく。」
「・・・・へ?目?あ・・・ああ、うん。・・・?」
「すごく綺麗なんです。政宗さまの瞳。キラキラして、力強くて・・・幸村さんの目も同じだなあ〜って、今思ってたんです。」
「目・・・・・ね。」
あんなに熱い視線を送って、そこまで思ってるのに、気付いてないんだ。
やっぱりこの子、おもしろいなあ〜。
「ふ〜ん。・・・じゃあ、俺様の目はどう?綺麗?」
「え?」
言って、佐助はぐっと顔を近付けてくる。
その近さにドキッとする。
「ね、どう?」
微笑んでいるため、少し細くなった目が、を射抜く。
「あ・・・・えと・・・・・」
ドキドキが邪魔をして上手く言葉に出来ない。
言葉に詰まっていると、庭の方から声がかかる。
「Wait!それ以上、顔近付けんな、忍!」
「・・・あら〜、気付かれてたか。」
佐助は苦笑いをして顔を放す。
はあはあ、と息を乱しながら政宗と幸村が寄ってくる。
「どうかしたのか?佐助」
「ん〜?ちゃんがね、旦那の目が綺麗だって言ってたから、俺様の目も見てもらってたところ。」
「目?・・・・某の目が、綺麗、と?」
かあーーー、と赤くなる。
本人に直接言われて、急に恥ずかしくなる。
「それは嬉しいでござる。」
「あ・・・・・はい・・・」
は顔を赤らめて俯く。
「・・・・・・・・・・」
その様子を政宗は不機嫌そうに見ていた。
第七話
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