第二十話
「政宗さま、お布団の用意できましたよ。」
「・・・・ああ、サンキュ」
月夜の晩、は政宗の自室にいた。
酒の相手をしていたのだが、政宗がそろそろ寝る、というので布団を敷いてあげたのだった。
政宗はゆっくり立ち上がると、ごそごそと布団にもぐり込む。
それを確認して、は蝋燭の炎をふっと息で消す。
明かりが消えると、障子を通して青白い月明かりが部屋を包んだ。
「・・・それじゃあ、おやすみなさい。政宗さま。」
そう言って部屋を出ようとすると、声をかけられた。
「Hey!、どこ行く。」
「へ?どこって・・・部屋に戻るんですけど・・・・」
振り向くと、片肘を支えに政宗が身を起していた。
その顔は少し不機嫌そうに見える。
政宗は来い来い、と手招きをする。
「・・・なんですか?」
言って歩み寄ると、ぐいっと腕を引かれて
「わっ!」
そのまま布団の中に引き込まれてしまった。
「ちょっと、政宗さま!?」
「・・・・・・」
いつの間にか、は布団の中で抱きしめられる体勢になっていた。
まだ冷たい布団の中で、政宗の体温がすごく温かく感じられる。
「あ・・・あの、政宗さま・・・・」
目の前には政宗の首元。
それだけでドキドキしてしまうのに、ふわっと彼の匂いがすれば、息が苦しくなるほど心臓がうるさく鼓動する。
「俺の傍にいろ、って言っただろうが。」
「え・・・でも――」
寝る時も?なの・・・?
「・・・・」
ドキンドキンと心臓が跳ね続ける。
政宗と自分の間に手を置いてはいるものの、彼がこの鼓動に気付いていないはずはない。
少しの間、無言でいると頭上でクスッと笑う声が聞こえた。
「んな緊張しなくても、何もしねえよ。」
そう言ってそっと頭を撫でてくる。
クスクスと笑う政宗の下で、は顔を真っ赤に染めていた。
・・・・そのうちに、政宗の呼吸がゆっくりしたものになっていく。
「・・・・政宗、さま・・・?」
寝てしまったのかと思って、見上げると、目を瞑ったまま「ん?」と返してきた。
見ると、眼帯をつけたままだ。
「眼帯、取らないんですか?」
「・・・・・」
「痛くなっちゃいますよ?取らないと。」
「いんだよ。朝起きて驚くのはお前だぞ?」
「・・・・・・」
この、穴の開いた右目を見て・・・・
と、暗に言っていた。
「・・・・」
そっとは眼帯を縛り付けている紐に手を伸ばす。
「・・・?」
ぱちっと政宗の左目が開く。
するっと眼帯を取って、そのまま、そっと右目を撫でてあげる。
「驚かないですよ。もう見慣れちゃいました。」
「・・・・」
そう言うと、政宗は切なそうに、でも嬉しそうに微笑む。
そしての額に口付けを落として、ちゅっと頬に吸いつく。
政宗にすがるように抱き付くと、ぎゅっと抱きしめてくれる。
「傍にいろ、って・・・・寝る時も、なんですね。」
「・・・風呂も一緒がいいか?」
「も〜、そんな事言ってません!」
「俺は構わねえぜ?」
「も〜!」
「はははは!」
スルスルと頭を撫でられて、それがたまらなく心地よい。
「・・・・・・おやすみなさい、政宗さま。」
「・・・・おやすみ、。」
そうして、二人抱き合ったまま眠りについた。
第二十一話
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