第二十話






――天下の独眼竜も、こりゃ形無しだ。ね?竜の旦那。


「「!!?」」

頭上から聞こえた声に二人一緒に顔を上げる。

「あ!」

声を上げたのはの方だった。
天井裏から、ひょこっと逆さに顔を出していたのは、甲斐武田の忍び、猿飛佐助だった。

「てめっ、いつからそこに―――!」

「佐助さん!」

嬉しそうにが呼ぶと佐助は身軽にそのすぐ横に降り立った。

「ひっさしぶり〜ちゃん!」

再会の嬉しさの余り、佐助に抱きつこうとするの体を政宗がその腕で制する。

「うゃ!」

「Stop!!」

「ちぇ」と聞こえた佐助の舌打ちに、ぎろり、と政宗の視線が飛ぶ。
つゆほども気付かずは嬉しそうに佐助に声をかける。

「佐助さん!元気でしたか?ぅあ〜、ほんとに久しぶりですね〜!」

「ん、元気元気!俺様、ちゃんの顔見たらもっと元気になっちゃった。」

てへ、と笑う佐助に口の軽い男だ、と思いながら政宗は溜め息をつく。
で、キスの現場を見られたことなど再会の嬉しさで全く気付かない様子だった。

「てめえまた俺の城に勝手に入り込みやがって。何の用だ、さっさと要件を言え!」

「あ〜はいはい、せっかくの再会だってのに、もう少し喜ばせてくれてもいいでしょうが〜。」

に対する態度とはまったく逆の態度で佐助が言う。

「ま、いいや。俺様がここに来た用件は」

勿体ぶってそこで言葉を切ると「はい!」とは嬉しそうに頷き、政宗は不機嫌な顔で微動だにしなかった。

「ずばり!結婚祝いは何がいい!?」

「「・・・・・・・・・・・は?」」

「・・いやだから。結婚のお祝い。何がいいか?って」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

それが重要な用件・・?

そう思ってと政宗は二人して沈黙する。

「あれ・・・?もしかして・・・・特になし・・?それって結構、俺様的には困るんだけどなぁ・・。聞いて来いってのが俺様の任務だし・・・」

「あ・・ええっと・・・なんか、頼んでいいのかどうか・・・私には・・・」

わからないです、と続けたの言葉に政宗は

の好きなものを全部揃えて持ってこい。」

「え!?ちょ、政宗さま!?」

「食い物から着物まで全てだ。越後の奴らにも、同盟の条件の一つとしてそれをさせてある。Ha!気がきくじゃねえか真田幸村。さすがは俺のrivalだな。」

満足そうに一人頷く政宗。

「了〜解!で?ちゃんは何が好きなのかな〜?」

「ええ〜!?」

勝手に進む話しにあたふたとしていると、障子越しに声をかけられた。

「政宗様・・・?失礼いたします。」

ワイワイと騒がしい室内に怪訝な顔で入っていたのは小十郎だった。

「てめえはっ・・・!武田の!」

佐助を見て警戒の声をあげるが、政宗の寛いだ姿に小十郎も力を抜く。

「何の用だ、猿飛。内容によっちゃあ容赦しねえ。」

そう言うと政宗が笑いながら答える。

「Don't worry.の好きなものを聞きに来たそうだ。俺たちの結婚祝いのな。」

「結婚祝い・・・だと?」

「めでたい事だからね〜。もちろん、式には俺様も呼んでくれるんだろ〜?なんつってー。」

あはは〜、と笑って言う佐助に「来てくれるんですか!?」とがあんまり嬉しそうに答えるので、その場にいた三人がどっと笑った。


麗らかな日、婚儀まであと数日。

あとは成実の帰りを待つだけとなった。












第二十一話