第二十一話




蒼い月が出ていた。
濡れ縁から見上げれば、丸いそれが地上の全てを薄蒼色に染める。

―お団子食べましょう。お月見団子―

「・・・・・」

母の声が、聞こえた気がした。
お月見の季節の思い出。

この蒼い月は未来も変わっていない。

「・・・・・元気かな・・・お母さん、お父さん・・・」

言葉に出せば、じわり、と涙が浮かんだ。
何も考えなくても心が切なさを知っていた。
・・・すん、と鼻をすする。
体に夜の空気が一緒に流れてこむ。
ふう、とゆっくり息を吐くと、心が落ち着いた。

今はもう・・・

「政宗さまがいないと・・・・そっちの方が寂しいのかも・・・」

失ったものを悲しむより、今あるものが無くなってしまう方がもっと悲しい。

「・・・・」
お仕事・・・終わったかな・・・

思って、は政宗の仕事部屋に向かった。
部屋の前まで来ると、戸が開けられていることに気付いた。
覗けば書面に向かう政宗の姿があった。

「・・・・・・」

少しの間じっと見つめているとに気付いた政宗が顔を上げる。
ニコッと笑顔をこちらに向けると目で「どうした?」と聞いてきた。
「なんでもない」と笑顔で首を振ると、立ち上がった政宗がの方へ歩いてくる。
近くまで来ると、そっとの頬を撫でた。
その手には頬を寄せる。

「月を見ると・・・・色々思い出しちゃって・・・」

「・・・Ah、今日は満月か・・・・・俺も思い出すな。」

「・・・・何をですか?」

「・・・・・戦場で、・・月を見てあんたを想った時のこと・・・・」

「・・・・?」

「あの時はもう二度と会えねえと思って・・・思い出してた・・・。」

「・・・・・」

「ほんの少し前のことなのにな。」

「・・・蒼い月は・・・・・政宗さまですね・・・」

「?」

「・・・・・大好き」

そう言っては政宗に抱きつく。

「・・・・蒼い月は・・あんただ、。・・・俺も・・・いや・・俺は愛してる。」

「・・私だって愛してますよぅ。」

言い返せば政宗はクスッと笑って、の唇に優しいキスを落とした。




蒼い月の下

永遠の想いを、奏でる。














最終話