最終話




「たっだいまーーー!!!」

大きな声が城内に響き渡った。

「おかえりなさい成実さん!!」

それに応えたのは伊達政宗の妻・・・正確には明日なる予定、のだった。

「間に合ったよ〜!褒めて褒めて〜!」

「ご無事で何よりですーっ!」

ふざけて両手を広げた成実につられて、も両手を広げ抱きつこうとする。
のその腕をくっ、と引っ張ると、成実の代わりに政宗がに抱きついた。

「ぅわっ!」

。あんた俺が怒らねえとでも思ってるのか?」

「ほぇ・・?」

最近のはどんなに凄んでも怖がらない。
というか、どこかフワフワと夢ごごちだ。
理由は一つ、婚儀を前にして喜ばない女はいないという事だ。

「・・・ったく。しょうがねえな」

悪態をつきながらも政宗は嬉しそうにの頭を撫でた。
チリン、と髪にさしてある簪が音を立てる。

「・・・あ。」

それを見て声を上げたのは成実だった。

「・・・え?」

が振り向くと成実は「ちょっと待ってて」と自室へ走って行った。

「・・・?なんでしょう?」

「・・・I don`t know.あいつは何を考えてるかさっぱりだ。」

しばしと政宗が中庭で桜を見ながら待っていると、何かを手にした成実が戻ってきた。

「これこれ!ちゃんに返しそびれててさ!」

そう言って「はい」との前に差し出された物―――。

「あっ・・・!!うそ・・!」

「―――unbelievable!(信じらんねえ!)」

成実の手の上。

そこにあったのは、失くしたと思っていた“あの”藍色の簪だった。

「どうしてっ――!探しても見つからなかったのに!」

「いや、俺が北の地に出発する前の日にさ、湯殿近くで見つけたんだよ。
あーのだ、って思ったんだけど、次の日出発だなんだって忙しくなっちゃって。」

ごめん渡しそびれた、と成実が謝る。

「――――」

と政宗は声も出せずにいた。

「・・・・?えっと〜・・・?」

沈黙を破ったのは政宗だった。

「成実てめえ!なんで早く言わなかった!それのせいでがどれだけ危ねえ目に遭ったと思ってやがる!」

「え!?、なんかあったの!?」

「なんかあったの、じゃねえ!!」

言い合っている二人の横では渡された簪を見つめる。

「・・・・・・」

藍色の簪。

いつも身に着けていた、

初めて政宗が買ってくれた大切な、宝物。

「っ・・・・」

うっ、と顔を歪ませると瞳から涙が流れた。

「ひっく・・・・」

「――・・」

政宗はぎゅうっとを抱き締める。

「う・・・よかった・・です・・・。よかった・・!」

嬉しさで涙するの背を、政宗はゆるゆると撫でてやる。
その様子を見て、成実も嬉しそうに笑った。

「政宗様、婚儀の前夜祭の準備、整いました。」

そこへ小十郎が歩いてくる。

「Ok!nice timingだ!。」

「・・・・はい・・・前夜・・祭?」

呼ばれて、泣き顔のままは顔を上げる。

「今日から三日間、大宴会だ!甲斐、越後、西海の鬼、それに前田の風来坊もそろそろ到着するだろうぜ!」

「・・はい!」

ぐっと政宗はの手を引く。
どたどたと手をとって走り出す二人。

「政宗さま」

「Ah?」

「一つ・・その、謝りたい事が・・・」

「What!?こんな時に何だ?」

「あの・・・着物・・・手作りの・・・・」

「・・・What?」

ニヤリ、と笑う。
言う事がわかっているように。

「間に合いませんでした・・・」

「・・・・・お仕置きだな」

「許してください!」と言うと、政宗の顔は嬉しそうに笑んだ。

「今日から三日間は眠れると思うなよ!Are you ready!?」

「―――Yeah!!」

そうして、数週間後。

完成した手作りの着物を見て喜んだ政宗から、熱い抱擁を受けるのは、また、別のお話。





春の日は麗らかに。

ひらりひらりと薄桃色が風に乗る。

空に桜舞う時、二人は永久に結ばれる。










END








政宗連載、これにて全て終了でございます〜!わ〜!!ありがとうございましたーー!!

連載第一部から応援して頂きました読者の皆様、本当にありがとうございました。
皆様の温かい応援があったからこそ、めげずにこうして二部まで長編を完結させることが出来ました。

以後も政宗短編などを含め、ちまちまと(←またそれか・・!)更新していきたいと思いますので、これからもどうぞ宜しくお願いします。

ありがとうございました!