第十七話





越後との同盟は事もなく結ばれた。

その証を手に、かすがは米沢城を後にする。

その頃にはすっかり陽も陰り、辺り一面を薄紫が覆っていた。





「政宗様、どちらへ。」

かすがの帰った部屋で、おもむろに立ち上がった政宗に小十郎が声をかける。

のとこだ。」

今朝も、起きたまま置いてきてしまった事が気になっていた。

「・・・あいつは我慢がいいからな。」

小さく言って部屋から出ていこうとする政宗を小十郎が引きとめる。

「政宗様、これを。」

そう言って小十郎が差し出したのは一通の手紙だった。
北の地へと赴いている成実からで、どうやら事は解決し、婚儀までにはこちらに帰って来られるという朗報だった。

「・・Ha!派手なPartyになりそうだな」

嬉しそうに言うと政宗はの元へ向かった。






その頃、は自室で髪をとかしていた。
開け放たれた中庭から夕方の涼しい風が流れてくる。

つん、と髪が引っかかるのは、この時代に来てから当然のこととなった。
こうして毎日丁寧にとかしてやらないと、リンスのないこの時代は髪がとても傷んでしまうのだ。

ふと、かすがの髪を思い出す。
綺麗な金色の髪。それはサラサラとなびいて自分の黒髪とは大違いだった。

「・・・・」
なんか特別な手入れでもしてるのかな・・・・
「あ〜・・聞いておけばよかった」

独り言を言いながら、再び髪をとかし始める。

つん、とまた髪が引っかかったとこで急に後ろから抱き締められた。

!」

「ぅわ!」

「ははは!What was there?(どうした)くっくっくっ!」

大好きな声と温もりが体を包む。

「もー政宗さま!また驚かして〜!気配消してくるのやめてくださいってばー!」

「Uh〜、その反応が面白ぇんだよな〜」

政宗はちゅーっ、とふざけたようにの頬に長い口付けをする。
「もう!」とそれを振りほどくようにすると、政宗は楽しそうに笑った。
そのままの首元に鼻をくっつける。

「good smell.(いい匂いだ)」

「くすぐったい!」

「甘い匂いだな」

クスクスと笑う政宗を見ても嬉しくなる。

「じゃあ政宗さまは?」

「What?」

ぱっと顔をあげた政宗の首元に、は鼻を寄せる。
その行動に政宗はさらに笑った。

「俺はどんな匂いだ、Honey?」

「ん・・・と〜・・・・いい匂い!」

「はっはっはっ!」

がぎゅっと首元に抱きつくと、政宗はよしよしと頭を撫でてくれる。

この時が、一番幸せな瞬間。

「・・・・政宗さま・・・・」

「・・・・・ん?」

「・・・あの・・・」

「なんだ?」

「婚儀の事・・・なんですけど・・・・」

「・・・ああ、なんだ。」

「・・・えっと・・・」

昼間ずっと考えて出した答え。

私の・・・政宗さまの為に出来る事。

「・・・・婚儀・・・もう少し、延ばしましょうか・・・?」

忙しい貴方を、少しでも楽にしてあげたい。











第十八話