幸せの夢






冬の季封村。
庭はすでに雪で覆われて、アリアたちが作った雪だるまが、大小たくさん並んでいる。

珠紀はというと、一室で書物の山に埋もれていた。
久しぶりに村に帰ってきた珠紀は、正式に玉依姫になるため、膨大な量の書物を読まなければならなかった。
しかし時間が経つにつれ、眠気が襲ってくる。
いよいよ本を置いて畳に横になると、すぐに眠りについてしまった。



ふと、温かい空気を感じて、珠紀は薄く目をあける。
夢の中・・・・そんな感じ。
ほわほわして温かくて、すごく気持ちがいい。
視界の右に、大好きな人の姿があった。

「祐一・・・先輩・・?」

そういうと夢の中の祐一は優しく微笑み、髪を撫でてくれる。

「もっと・・・撫でてほしいです・・・・」

ふわふわして気持ちがいい。

珠紀はそのまま、ころんと横向きなって、祐一の胸元に顔をうずめる。
背中に腕を回して甘えると、祐一は肘を立てていない方の手で抱きしめてくれる。
珠紀は笑みを浮かべて、目を瞑る。
すごくすごく幸せな夢。
祐一の温かさ、においが、珠紀を安心させる。

「ん・・・・先輩・・・・」

すうすうと、珠紀は寝息をたてる。





ぱち、と目が覚める。よく眠れたらしく目覚めがいい。
しかし珠紀の視界を覆うものがあった。
ついでに大好きなにおい。
自分の体勢を把握する前に、目の前の首筋を目で追う。
徐々に目線を上げていくと、そこには祐一の顔があった。
すうすうと寝息をたてている。
珠紀は横向きで祐一に抱きついた体勢でいた。
二人、抱き合ったまま寝ていたらしい。

「・・・・夢じゃ、なかったんだ。」

ぽそっと言うと祐一が目を開けた。

「・・・・・・起きたのか」

「・・・・はい。よく眠っちゃいました。」

抱きついた体勢のまま言う。

「先輩、私すごくいい夢を見ました。」

そういうと祐一は目を細める。

「・・・どんな夢を見た」

「ん〜・・・先輩とお昼寝をする夢です。」

幸せそうに微笑む珠紀。

「・・・・・・・俺も、夢を見た。」

祐一の手が珠紀の首の後ろあたりに回って、親指でそっと耳を撫でる。
珠紀はくすぐったそうに肩を縮める。

「二人で昼寝をする夢だ。」

祐一らしい夢に、ふふっと珠紀が笑うと、唇にキスをされる。

「・・・・二人きりじゃないのが残念だな・・・・。」

奥の部屋からはアリアたちの声が聞こえてくる。
え?という顔を向けると、祐一はいや、と言って腕枕をしてくれる。

「もう少し、このままで。」

「・・・はい。」

そう言って二人で目を瞑る。
まだ、二人の夢の続きは終わりそうにない。