蘭の香り 蘇芳side
*注意*
この話の中では
玄奘が牛魔王に会いに行く前に、蘇芳の部屋を借りています。
ゲームと微妙な時間差が生じています。
いわゆる捏造と言うやつです。
お許しくださいませ。
先に「蘭の香り」を読むことをお勧めします。
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何度呼んでも、返事がなかったから。
俺は仕方なく、扉を開けたんだ。
入ると、玄奘がうとうとと俺のベッドで寝ていた。
・・・・当り前か。俺が貸したんだから。
もぞ、と少し動いたかと思ったら柔らかく微笑んだ。
「・・・いい・・・・匂い・・・・」
きゅうっと胸が苦しくなった。
愛おしい。
正直な俺の気持ち。
でもそれは口にしない。
だって、俺たちは敵だから。
だから“可愛い”でごまかす。
まあ、それもほんとのことだけど。
「そんなに俺の匂いは、いい匂い?」
言うと、思いっきり顔を上げた。
その顔と来たら、可愛いの愛しいのって。
「な、な、な・・・!」
あんたのあせった顔、俺好きだなあ。
「あー、でもごめん。勝手に部屋に入ったりして。」
でも入って良かった。
こんなに可愛い玄奘、見たことなかったから。
真っ赤になって俯いちゃって。
あ〜あ、ほんっと可愛いなあ。
「・・・・敵なのが残念。」
このまま、キスしてしまおうか。
そう思って顔を近付けると、玄奘が強く目を瞑る。
・・・・そんなに、ぎゅっと目を瞑らなくてもいいのに。
「・・・・・」
でも。
頬で我慢しないとね。
今はまだ、敵なわけだし。
「これから牛魔王の所に行く。俺が守るから、心配しないで、玄奘。」
絶対に、誰にも触れさせないよ。
初めて会ったときから、玄奘は特別だから。