麗らかな幸せ
(ED後のお話になってます。)
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ぽかぽかとした陽気の中、千鶴は目を覚ました。
春。
暖かな風が頬を撫でていく。
寝転がっていた碧い草。蝶が舞い、花びらが舞う。
千鶴は起き上がると辺りを見回した。眠る前まで隣にいた沖田がいない。立ち上がり、少し歩く。
小さな丘になっているこの場所からは、村の様子を眺めることが出来た。
丘に沿って走る道の先に、彼を見付けた。
商人らしい人と話しをしている。そのうちに何かを受け取って、こちらに戻ってきた。
沖田は丘の上の千鶴に気付いて、にっこりと微笑む。
さくさくと丘を登ってきた沖田に千鶴は歩み寄る。
「沖田さん、何してたんですか?」
そう言うと沖田は少し不機嫌な顔になる。
「そ・う・じ・さ・ん。もう何度も言ってるはずなんだけどなあ。」
あっ、と口元を押さえる千鶴。まだ、その呼び方に慣れていない。
「そ、総司さん・・・あの、何してたんですか?」
改めて聞くと沖田は、これ、と言って包みを広げる。中には団子が入っていた。
「わっ、おいしそう!お団子屋さんだったんですね、さっきの人。」
「千鶴はお団子好きだったよねぇ。どれがいい?食べさせてあげるよ。」
「え!?あ、でも―・・・」
顔を途端に赤らめる千鶴。沖田はそんなことはお構いなしに、みたらし団子を一つ取る。
「はい、あーん。」
「・・・・・・」
「あーん、は?千鶴。」
「あ・・・あーん・・・」
顔を真っ赤にして小さく口を開ける。団子が口に入る。
「・・・・・・あ、・・・おいしい!」
「結構有名な団子だからね。三色団子もあるし、好きなだけ食べていいよ。」
そう言うと沖田は、ぽん、と団子を包みごと千鶴に渡して
「あーん」
と唐突に口を開ける。
「僕には食べさせてくれないの?」
「え!?」
さらに顔が赤くなる千鶴。沖田はその様子を見てくすくすと笑う。
「僕、三色がいいな。食べさせてよ、千鶴。・・・・・・あ、ちょっと待って。」
食べさせてあげることを躊躇っていると、急に沖田の顔が近付いてきた。
えっ、と思っているうちに、唇のすぐ横をなめられる。
「・・・・・あ、おいしい。みたらしも結構おいしいなあ。」
口の横にみたらし団子のたれがついていたらしい。
「お、沖田さ―」
「総司」
沖田は言うが早いか、千鶴の口をふさいでしまう。
「んっ・・・!」
千鶴の口の中を味わってから、ゆっくりと唇を離す。
長く口付けていたせいで、千鶴はぼうっとしてしまう。
鼻先がくっつくほどの距離で、沖田はにこっと笑う。
「やっぱり、おいしいみたいだね、みたらし団子。」
「―・・・・・もう!総司さん!」
恥ずかしくて声をあげる千鶴。
ははっ、と沖田は笑って、千鶴の手を取る。
「向こうの木の下で食べよう。」
さくさくと草の上を二人で歩く。
「・・・おなかいっぱいになったら、また眠っちゃうかもしれないですね。」
「そうだねえ。その時は膝枕してくれるんでしょ?」
くすくすと笑いながら丘を登っていく二人。
春の風が、花びらを舞わせる。
いつまでも、いつまでも。