僕をそばに感じて





虫の鳴き声、暖かな空気。
初夏の香りが漂ってくる。
橙の空がほのかに紫を帯びてくる時刻、千鶴は縁側で寝てしまっていた。
うとうとと重くなった瞼が閉じる。

大好きな人のためにご飯を作り、部屋を片付けて、二人手を繋ぎながら買い物に出かける。
毎日をそれで過ごす、幸せな時間。
だが千鶴は最近、季節の変わり目だからだろうか。眠くてすぐに寝てしまうことが多かった。
今日もこうして、いつの間にか眠りについてしまっている。
起きなくてはならないのに体が重い。

まだ眠りが浅いせいか、かすかに体の周りの音や空気の流れを感じる。

「あれ・・・・また寝てる。」

優しい声が聞こえてきた。
体を包む空気がふわりと動く。抱き上げられているのだろうか、足には床の感触があるのに、背中には人の体温を感じる。

前髪に触れる指の感触。
額に触れる柔らかい唇。

「ん・・・・総司さ・・・」

大好きな人の名前を呼ぶと、包む体の空気が動く。
額、頬、鼻の先、唇に優しく触れる。
大好きな人のにおい。

「千鶴・・・」

くすぐったく感じる声に身をよじると、クスクスと声が聞こえてくる。

「千鶴」

ゆっくりと目を開けると、目の前に沖田の顔がのぞいていた。

「・・・総司さん・・・・すいません、また寝てしまいました。」

まだうとうととした目で言う。

「いいよ、まだゆっくり寝てて。」

にこ、と千鶴が笑う。

「でも、ちゃんと僕を感じて寝て?」

沖田は優しく微笑みながら、その瞳を千鶴からそらさない。

「・・・・・さびしがり屋なんだから、総司さんてば。」

クスクスと少しからかって言うと沖田はにっこりと笑って

「千鶴が。でしょ?」

唇を重ねる。
それがうっとりと睡魔を誘う。
ちゅ、と唇を離すと千鶴はまた目を閉じて寝息を立てていた。
そっと髪を撫でて、微笑む沖田。


それが、毎日の幸せの時間。