紅葉の行方 那岐side






昼寝には最高の日だったと思う。
風は少し冷たいけど、太陽のおかげで体はポカポカしていた。

あふっと一つあくびをして、那岐はフェンスに体を預けた。
ゆったりと目を瞑る。
あ・・・眠りそう、と思った矢先
・・・・・・・・キィ・・・と扉の開く音がした。

ちっ、誰か入ってきた

そう思って薄目で扉のほうを見る。
そこにあったのは、外の空気に体を縮めた千尋の姿。

無意識に顔がほころぶ。
千尋は那岐に気づかれないように、そ〜っと歩を進め始める。

可愛い千尋。このまま時が止まってしまえばいいのに。
そうすれば誰にも僕たち二人の邪魔なんて出来ない。
この間だってそうだ。放課後、千尋を呼びつけて告白しようとする男子。
どうせ、千尋は僕以外の男となんて仲良く出来ないんだから、無駄なことなのにさ。

そう思って、那岐は重くなった気持ちを振り払うように、少し身じろぎをする。
千尋はまだ来ない。

でも、この時間が長ければ長いほどいい。
そうすれば、その間、千尋はずっと僕のことしか見ていないから。
・・・・・・・・・僕って独占欲、強いんだな・・・。

なんて思っていると、ふわりと空気が動いた。
千尋がやっと那岐のところにたどり着いたらしい。
でも、何も起こらない。
そっと薄目を開けると、上を見上げる千尋がいる。
不思議に思って上を見上げようとした瞬間、千尋の体が後ろにバランスを崩した。
とっさに腕をひっぱる。
そのまま、千尋は抱きついてきた。



・・・・・・・・・・・・・はあ。

嬉しさを隠してため息をついてみる。


「い、今、ため息ついたでしょ、那岐!」

抱き合っている体勢が恥ずかしいのか、大きな声を出す千尋。

「・・・・・・千尋は見てて飽きないよ。それに、騒がしい。」

けど、それが心地いい。

「・・・・・・・・・・いつ、・・・から?」

「・・・・・・・・何が」

「いっ・・・・いつから・・起きてたの?」

「・・・・・・・・・さあ。いつだっけ。」

「ひ、ひどい!目、覚めてるならそう言ってよ!」

真っ赤になりながら抗議する千尋を、那岐はさらに強く抱きしめる。

可愛い千尋。放したくない。
絶対に他の男のところになんか行かせない。
僕だけを見て、僕だけを思って、
僕のところにだけ寄ってくるんだよ。


そう思いながら、千尋の額にキスを落とす。
少しだけ、風が温かくなった気がした。