桜の薄い黄色の髪飾りを買った千鶴。
さっそく身につけて、あの人がいるであろう神輿の近くに向かう。



沖田さん、何て言ってくれるかな・・・

雑踏の中、そんな事を思いながらカラコロと歩いていると、
突然、後ろから抱きしめられた。

「きゃあっ!」

「かわいい千鶴ちゃん」

耳元で聞き覚えのある声が響く。
振り返る前に千鶴は名前を呼ぶ。

「もー!沖田さん!」

会いたかった人に会えて、怒った言葉とは逆に頬が緩む。
くす、と笑って沖田が首元に顔を近づける。
その様子を見て、
浅葱色の羽織を着たまま女の子を抱きしめる新選組隊士に、町の人が視線を送ってくる。
それに気付いて、千鶴は慌てて体を引き離す。

「急に―・・・しかもこんな所で駄目ですよ、沖田さん。」

「なんで?僕は君が可愛いから抱きしめただけだよ。」

「!!」

飄々と答える沖田に、千鶴は呟いて顔を赤くする。

「・・・よ、よく私だってわかりましたね、こんな格好してるのに。」

「僕を誰だと思ってるわけ?・・・・でも、どうしたの?急にそんな格好して。バレたら、まずいんじゃないの?」

「あ、これ近藤さんがくださって・・・・・」

ふ〜ん、と言って浴衣を眺めて、腕を組む沖田。
その様子に、千鶴はなんだか不安になってくる。

「・・・・・変、ですか?」

「そんなこと言ってません。」

聞けばすぐに返事が返ってくる。
ぐいっと沖田に手を引かれて、そのまま祭りの通りの脇、建物の陰に入る。

「ここならいいでしょ?」

なにが?と聞く間もなく、今度は正面から抱きしめられる。
沖田は体を窮屈なほど密着させて、顔を覗き込んでくる。

「髪飾りも似合ってる。あんなに悩まなくても、どれだって似合ってたと思うけどね。」

あんなに、って・・・
いつから私のこと見てたんですか、沖田さん・・・
「だって・・・・見て、ほしかったから・・・」

「ん?」

聞きながら沖田は千鶴の鼻に、自分の鼻をくっつけてくる。
目の前に沖田の顔があって、うまく言葉に出来ない。

「浴衣・・・・沖田さんに見てもらいたくて・・・・探してたんです・・・・・んっ!」

ちゅっと唇が重なる。

「かわいいよ、すごく・・・」

もう一度唇が重なり、徐々に深くなっていく。

「ん・・・おき・・・・沖田さ・・・ん!」

「かわいくて、閉じ込めたいくらい。」

苦しくて、放した傍からハアと息を吐く。

「・・・・お祭り・・・沖田さんは回れないですよね、お仕事だし・・・」

聞くと沖田は、ん〜、と考えるように首をかしげる。

「千鶴ちゃんは?回るの?一人で」

ん〜、と今度は千鶴が首をかしげる。

「ええと、」

「いいよ、回らなくて。僕とここで、ずっとこうしてればいいでしょ?」

答えを言う前に沖田が強引に決めてしまう。
ね?と不敵な笑みで言われれば、千鶴は笑うしかない。
くす、と笑って

「はい。じゃあ、もう少しこのままで」

言えば、沖田はうん、と笑って
今度は優しく、ゆっくりと
唇を重ねてきた。

「ん・・・・」

二人きりのお祭りは、まだまだ終わりそうにない。







「京祭りの探し人・沖田ED」