赤に青、黄色、様々な色の飴玉を買った千鶴は、あ〜ん、と一つ口に入れると神輿の方へと向かう。
人混みをかき分けて進むと、先に浅葱色の羽織が沢山見えてきた。
警備をしている新選組だ。
千鶴はその中にいるであろう彼の姿を探す。
「えっと・・・・・原田さんは・・・」
見渡すと、神輿の左、少し離れた所に腕を組んで立っていた。
千鶴はカタカタと下駄を鳴らして、原田の背後に回る。
他の隊士たちに見つからないように、後ろからチョイチョイと袖を引っ張る。
「ん?」
方眉を器用に上げて振り向く原田。
その口に、ポンと先ほど買った飴玉を放り込む。
「んあ!なんだこれ、甘っ!」
クスクスと笑う千鶴を見て、原田は声を上げる。
「ち、千鶴!?」
「わわ、原田さん!しーー!」
口に人差し指を当てて原田を見つめる千鶴。
「おま―・・・何やってんだよ、こんな所で!」
こそこそと小声になる原田。
「近藤さんに浴衣を頂いて・・・・」
言ってるうちに手を引かれる。
「とりあえず、ここじゃ隊士たちに気付かれるかもしれねえ。」
祭りの大通りを離れて、横道に入っていく。
原田の歩く速度に合わせているため、千鶴は少し小走りになる。
カタカタと下駄の音が道に響く。
と・・・・
「いたっ!」
ガクン、と足首が捻れてしまった。
手を引っ張って前を歩いていた原田が、その声に振り向く。
「どうした?」
「・・・鼻緒が・・・・」
足元を見ると、鼻緒がほどけてしまっていた。
原田は膝をつくと、結びなおしてくれる。
「よく似合ってる。・・・・綺麗だ、千鶴。」
唐突に言われた言葉に驚いて、千鶴は顔を真っ赤にする。
「あ・・・・原田さんに・・・一番に見てもらおうと思って・・・・。」
言うと、原田はそうか、と言って顔を上げる。
その顔には優しい笑顔があった。
見とれていると、急に体が持ち上げられた。
横抱きにされて、先ほどよりずっと顔が近い。
「は、原田さん!?」
「足首が赤い。このまま屯所に帰るぞ。」
言ってずかずかと歩き出す原田。
「え!?だ、大丈夫ですってば、原田さん!」
太い腕の中で抵抗をしてみる。
が、原田の力の前で、そんな事はほぼ意味がない。
「私、もう少し祭りにいたいです!」
それでも諦めずに訴える千鶴。
その様子を、原田はちらりと横目で見る。
「・・・・そうか。でも俺はいたくねえな。」
そう返された返事に、千鶴は顔をかしげる。
「屯所に行けば、二人きりだろ?」
「え・・・?」
「お前を他の奴には見せたくねえんだ。」
かあっと顔が熱くなるのがわかった。
優しくそんな事を言われれば、心臓がドキドキして原田の顔を見ていられなかった。
「・・・・・」
黙ってしまった千鶴に、原田はああ、そうだ。と声を上げる。
なに?と原田の方に顔を上げれば、唐突に唇を合わされた。
その隙間から甘い塊が入ってくる。
「んん!・・・ふっ・・」
原田はぺろっと口元を舐めて、唇を離す。
「それ、俺には甘すぎる。やるよ、残りはな。」
そう言って、ニヤリと少し意地悪そうに笑む。
コロと口の中で舐めれば、原田の味が残る。
「・・・もう、原田さんてば・・・・・」
顔を真っ赤にして言うと、原田はにこっと笑って
「屯所に帰ったら、もっと甘いのをやるよ、千鶴。」
そう言って頬に一つ、口付けを落とす。
祭りの中、
赤い浴衣が浅葱に包まれ、
夜の闇に消えていく。
甘い二人の夜は、これから。
「京祭りの探し人・原田ED」