(注意・連載関係なし。アニメ二期第一話ねつ造。ヒロインは連載主人公の設定で。)
*
夜のとばりがおりていた。奥州、米沢城。
他軍と共に豊臣軍の奇襲をうけた伊達軍は、あるいは自軍の中に間者がいるかもしれない、と考えていた。
そこで政宗と小十郎は内部洗い出しを始めたのである。
「では政宗様。野郎どもは私が引き受けましょう。」
「ああ。頼んだ。」
「・・・・は・・・どうされますか。」
「・・・・・」
米沢城にて
その日は明るい月の出る夜だった。
政宗と小十郎が話をしている頃、は与えられた自室で、鏡を前に髪をとかしていた。
スルスルと、この世界に来て少し伸びた髪をとかす。
「っ・・」
時折、櫛がひっかかるのはこの世界に来てから珍しいことではなくなった。
「いた・・・・あーも〜傷んでる・・・」
言いながら今度はそうっと櫛をとおす。
さらり、と髪がまとまったところで「」と廊下から声をかけられた。
不機嫌でもなく、かといって機嫌が良いわけでもなく、政宗の普段の声だった。
「政宗さま?どうぞ。何か用ですか?」
鏡の前から数歩離れた所に正座をする。こうしないと和服は裾が乱れてしまうからだ。
スラッと開いた戸の向こうに、政宗が立っていた。
その表情は先ほどの声のように、まるで普通の表情だ。
が、を一旦その目にとらえると、いつもの意地悪そうな、何かを企んでいるような笑みに変わる。
「な、なんですか?」
その笑みに無意識に警戒してしまう。
政宗はニヤリという表情を変えることなくの後ろにドカッと座り込む。
「ま、政宗さま?」
*
・・・・さて、どうしたものか。と政宗は考えていた。
・・・野郎ならともかく、一般人の女を相手にどう調べたものか。
広間で緊急の会議が行われたことはも知っているはず。万が一、が間者であるなら、今夜中に動きたいはず・・・・。
ならば逆に近くにいた方が観察しやすい。と政宗は考えた。
一瞬でも表情を変えればわかるし、纏う空気の変化も感じ取りやすい。
そう考え、あえていつも通りに過ごすことにした。
とりあえず、体の緊張を確かめる。
事を成そうとする時、人の体というのは正直で。筋肉が強張っているものだ。
キュッと背後からの体を抱きしめる。
「きゃあっ!ちょっとま、政宗さま!急になにするんですか!」
あまりにいつも通りの反応に、クスッと笑いがこぼれる。
はきちっと座っていた足を崩し、必死に体に回った政宗の腕をはずそうともがいていた。
その姿が初心で、ますますいじめたくなってしまう。いや実際は、いじめているわけではなくて調べているのだが。
「Hey、静かにしてなkitty。戦から帰って来るとどうも人肌恋しくなる。」
「なっ―――!」
・・ま、半分は冗談だけどな。こうも真っ赤な顔されるともっとからかいたくなるぜ。
くつくつと喉奥で笑って、今度はの首もとに鼻を寄せる。
「ぎゃあ!!」
・・・変な悲鳴上げたな、今。・・・特に知らない匂いもしない、と。
から香るのは、政宗の知っている香り。いつもの着物につけてある香のにおいだけ。
忍びが纏う独特の草の匂いもしないし・・・。
・・・・ま。シロだよな。疑うだけ時間の無駄ってもんだ。
未来から来た、という事を信じなかったわけではない。
しかし、いざ近くに間者がいるとなると疑わなくてはいけないのは確かだった。
知らず、ほっ、と息が抜ける。
「・・・あ、あのぅ・・・」
「・・・Ah?」
「い、いつまでこうしてるつもりなんですか・・・?」
おずおずと聞いてくるを見れば、顔がまるで達磨の様に赤くなっていた。
・・・・人間こんなにも赤くなれるもんなんだな。
くく、と笑ってから政宗は「Sorry.」と手を放す。
くしゃっと髪を撫でてやればは赤い顔のまま俯く。
「悪かったな。疑いは晴れた。ゆっくり休め。」
「へ?う、疑い・・・?」
くてっと首を傾けるに、ニヤリと笑いかけると政宗は何事もなかったかのように部屋から出て行った。
「休めって・・・・休めるわけないじゃん!」
とたとた、と廊下を進む政宗はふと足を止める。
「・・・・・Ah〜やべえな。」
がしがしと頭をかくと、ふっ、と強く息を吐く。
「自分の理性を褒めてやりたいぜ。」
特に女と意識した事もなかったに、今、女を感じてしまった。
柔い体に甘い香り・・・・。
自分でしておいて、ほんの少し後悔する。・・・政宗にとっては、かなり・・・珍しい事。
「・・・・・Coolじゃねえな。」
そう政宗は低く言うと、クスッと笑って再び廊下を歩きだした。
とりあえず、は間者ではない。と結論付けたのである。
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