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あの尻尾を引っ張ってみたくなるのは私だけでしょうか



しっぽ





那智がここ戦国時代に来て、初めての春。
フワフワとした陽気に心もどこか軽い。
城内を散策していると、庭に面した縁側に座る人影を見つけた。
上田の城主真田幸村は一人で縁側に座っていた。
彼にしては珍しく静かにそこに座り込み、特に何をするわけでもなく、ぼうっとしているようだった。
その背中に、ぽてっと可愛く伸びる後ろ髪。
走ればくるくると動き、振り向けばふわりとなびく。

・・・かわいー

そう思って那智はそぅっと後ろに近付く。
実は前々から触ってみたかった幸村の髪の毛。
そっと手を伸ばし・・・・・

ツンッ!

と引っ張ってみた。

「いたっ」

予想外に大きな反応に、自分でしときながら驚いてしまう。

「わっ!ごめん幸村さん痛かった?」

那智殿、いやたいして痛くはないが、いきなりどうしたのでござる?驚いたでござる。」

「いや、なんか引っ張ってみたくなっちゃって、その髪。」

「これ、でござるか?」

そう言いながら幸村はチョイと後ろに縛ってある髪をつかむ。

うん、と頷くと幸村は「ふむ」と言って悩み顔になる。
その真剣な様子が可笑しくて可愛くて。

「え、那智殿?」

那智はクスクスと笑いながら「幸村さんかわいい」と・・・・つい本音を漏らしてしまった。

「な!か、かわいいなどと!某は男子にござれば!かわいいなどという言葉とは無縁でござる!」

顔を真っ赤にして抗議する幸村もまた可愛く・・・・でもこれ以上言うと可哀想なので

「ごめんなさい。幸村さんはすごくカッコいいです。」

ニコッと笑って素直に謝る。そうすれば優しい幸村は許してくれるから。
少し赤らんだ顔のまま幸村がふいに手を伸ばす。

「かわいいのは那智殿の方だ」

そう言って、その手のひらを那智のおでこから頬に滑らせる

「すごくかわいい。那智」

「!!な、何をーー!」

突然とれる敬語に那智の心臓がドクッとはねた。

真っ赤になった那智に、幸村はにこっと笑いかけると「さて」と立ち上がる。
「稽古の時間でござるゆえ」そう言って廊下を歩きだす。
そう後姿を見ていると、幸村がふと振り向く。
その顔はニコニコと笑っていて・・。

「・・・・」

来ないのか?と聞くようにこちらを見るものだから。

「っ・・・」

幸村の元に駆けよれば、そっとその手を取られた。
見下げる幸村の目線が優しさを含んでいて、ドキドキしてしまう。

「~~~~」

かわいい、なんて・・・・やっぱ違うみたい・・。

何も言わず、那智の手を引き歩き出す幸村。
その横顔はとても凛々しく。

かっこ・・いいな・・・。

歩くたびに、彼の背に髪がゆらゆらと揺れていた。