最終話





戦が終わって、その夕方、伊達軍は奥州に帰還した。

城に入ると、そこに残っていた者たちが盛大に出迎えてくれる。
すでに政宗との関係は知れ渡り、祝言祝言、と皆騒いでいた。



政宗は自室に入り、医師によって傷の手当てが施されていた。
その横でと小十郎が静かに控えている。

「民までも騒いでおりますよ、政宗様。」

「・・・What?」

ふと医師はを見て、優しく微笑む。

「祝言の事です。様との。」

「!」

顔を赤くしたのはだった。

「そうだな。今はまだ寒いからな、春まで待つか。なあ、?」

「えっ・・・!あ・・・・は、はい・・・」

顔を真っ赤にして俯いてしまったに、他の三人が笑う。
当り前のことのように進められている祝言の話。
はなんだか気恥ずかしかったのだ。

「ま、それはお二人で決めていただいて。」

医師はそう言って、政宗の治療を終える。
一つ礼を取って医師は出ていく。
それに続いて小十郎も出ていった。

パタ、と戸が閉められる。

「・・・・・・」

部屋に二人きり。

はそろりと政宗を見やる。
政宗は、治療で乱れた着物を着直していた。
それが済むとの方を見る。
目があってしまい、の心臓がドキッと跳ねる。
かあー、と顔に熱が上っていく。



政宗はそう呼んで、手招きをする。
静かにそれに従って、政宗の近くによると、やんわりと抱き込まれた。

「悪かったな、帰してやれなくて。」

意外な言葉が政宗の口から出た。

未来に帰らなかった

それはが決めたこと。
政宗が謝ることなどない。

「・・・私が、決めたんです・・・・。どうしても、あの時・・・政宗さまの元に行きたかったから・・・。」

帰れなかった・・・
政宗さまを置いてなど、決して。

「今は。」

「・・・え?」

顔を上げる
目の前には政宗の顔。

「今は、後悔してねえか?」

「・・・・・・」

隻眼に、不安の色が宿っていた。
どんな理由であれ、帰してやる、と約束したのに帰してやれなかった。
それが、不安を残した。

「・・・・」

は、ゆっくりと微笑む。

「するはず、ないです。・・・だって、今、すごく幸せです。政宗さまの傍にいられて、すごく。」

その言葉を聞いて、政宗はようやく笑顔になる。
そして、その顔をゆっくりと近付けてくる。

――そこは・・・・だめだ。――

キスをしたら・・・・

「あんたをもう、手放す気はねえ。一生、俺の傍に。」

「・・・・はい。政宗さま。」

そうして・・・
柔らかく、唇が重なる。

それはやっと、一緒になれた証。
離れることのない約束。

あの時・・・・
初めてここに来た時、出会ったのが貴方で
本当に良かった。

「ん・・・・・っ・・・」

「・・・・は・・・っ」

ちゅっと、深くなった唇がようやく離される。
の目の端には、薄く涙が浮かんでいた。

「・・・

目の前の蒼眼が細められる。
そのままの体を押し倒す。

「えっ・・・!ちょ、政宗さま!?」

見上げるとそこにはニヤリ、と笑う政宗の顔。

「祝言なんてのはいつだっていいだろ?皆に見せる祝言は、あんたの好きな時に執り行えばいい。けど・・・」

そこまで言って、政宗はの頬に手を触れる。
そっと撫でると熱を宿した眼で、見つめてくる。

「俺は今、あんたが欲しい。」

「は、はい!?」

驚いている間に首元に唇を寄せる政宗。

「んっ・・!ちょ、ま・・・!政宗さま!腕の傷は――」

「No problem.」

「そんな――――んん!」








そして、“皆に見せる”二人の祝言は、もう少し先のこととなる。

淡い花びらが舞い、暖かな風が吹き始めるころ。

の世界が、ここになってから、ひと月と少し後のことだ。











政宗連載はこれで終了となります。
初めて書いた長編だったので、色々未熟な所もあったかと思いますが・・・・ごめんなさいね。
長い間、応援をありがとうございました。
これからも、ちまちまと(・・・おい!)更新していきますので、どうぞ宜しくお願いします。

2010年1月25日



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