ある日のこと。
は自室で一人、本を読みふけっていた。
とはいえ、この時代の文字などあまりに達筆すぎて、ほとんど読めない。
しかし元の世界、古典の授業で習った文字がつらつらと並ぶその本は、興味があるものだった。
読めない中にも、所々読める文字がある。
記憶を頼りに文字をたどっていた。
抱っこ
「Hey、。暇なら城下にでも行こうぜ。」
スパンと障子を開けての部屋に入ってきたのは、ここ奥州の若き筆頭、伊達政宗だった。
「・・・・・ちょっと待ってください。私ってば結構この時代の文字、読める気がするんです。」
は本に視線を向けたまま、見向きもせずにそう答える。
「そんなの後でいいだろ。おい、。」
「ん〜・・・・あれ、これ何て読むんだっけ・・・えっと〜・・・・・」
「Hey!」
「ん〜〜・・・・」
何度呼びかけても、こちらを見ようともしないに、政宗は舌打ちをする。
ドカドカとの隣まで来て足を止める。
「Shit!無視しやがって」
そう言って政宗は、の背と膝裏に腕を入れると、ひょいと持ち上げる。
「うわっ!ちょ、ちょっと、政宗さま!?」
何するんですか!と抗議の声を上げる間に、座り込んだ政宗の膝の上に乗せられてしまう。
「・・・・・・・・」
「Ok!これでいい。」
Okって・・・・・
「・・・・・・な、何がいいんですかーーー!おろしてください!」
胡坐をかいた政宗の膝の上。
前向きに座らされて、後ろから抱きすくめられている体勢。
「An-ha?俺を無視したいんだろ?存分に本を読めばいいじゃねえか」
これは・・・・・
完璧に拗ねてる・・・。
「べ、別に無視したいわけじゃ・・!」
「読めねえ字があるんなら教えてやるぜ?なあ?」
「っちょっと!」
肩越しに耳元で、しかも掠れた声で囁かれれば、無意識にぞくりと鳥肌が立ってしまう。
「やだ!やめてください!」
この状況から抜け出そうと暴れてはみるが、さらに強く抱きしめられ、逃れることはもはや不可能・・・・。
あげくの果てに、ちゅっと音をたてて、政宗の唇がの耳たぶをなぞる始末。
「――――!!!」
は、ばさっと手に持っていた本を落としてしまう。
「ま、政宗さまってば!も〜やめてください!」
「やめてほしいか?」
「―――だから、そう言ってるじゃないですか!」
「なら、俺を無視するな。腹が立つ。」
小学生!?〜〜も〜、子供なんだから・・・
「わ・・・わかりましたよ。城下、城下ですね。行きましょう。」
そう言って政宗の膝から立ち上がろうとする。
が・・・・
「・・・・よっ・・・よっと・・・・・」
「・・・・・・・」
いくら立ち上がろうとしても、腰に絡みついた政宗の腕が緩まない限り、立ち上がれない。
「政宗さま!?ちょっと、放してくださいよ。城下行くんでしょう?」
「・・・・気が変わった。今日はこのままでいる。」
「はい!?」
このままって・・・・・
どうにかして後ろを振り向くと、そこにはニヤリと笑う政宗の顔があった。
「たまにはこうゆうのもいいな〜、なあ、?」
そう言いながら、の髪を持ち上げて、うなじに口付けてくる。
「きゃうっ!もう!政宗さまーー!」
政宗に呼ばれた時は、何があっても無視は止そう。
そう思っただった。
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