今日はすっごく・・・甘えたい気分・・・・・



貴方に甘えたくて





春の日の午後。

米沢城。

は、ぽくぽくと一人で庭を散歩していた。
ウグイスが鳴き、ホカホカと暖かな日差しが大地を温める。

「う〜ん!気持ちいい〜!」

くいーっと伸びをして、大きく息を吐く。
ふと後ろを振り向くと、そこには縁側が見えた。
その奥が政宗の仕事部屋である。
そこの戸はピタリと閉められ、沈黙を守っていた。

「・・・・まだ終わらないのかな〜・・・。」

いつも仕事が終わるのは午後。
そろそろ戸が開いて、中から伸びをしながら政宗が出てくる頃だった。

祝言を挙げてから、ひと月。
最近は仕事が忙しいらしく、以前より一緒にいる時間が少なくなってしまった。
夜でさえも、最近はいつもが先に床に入る。
寝ずに待っていようと思うのだが、それもなかなかに難しかった。

そんな事が続いてか、今日はやけに甘えたい気分なのだった。

「・・・・」

ぽてっとお尻を近くの石の上に下ろして、じっと戸を見つめる。

早く出てきて早く出てきて早く出てきて。

まるで呪文のように心の中で唱える。
すると、念が届いたのか、スッと戸が開いた。
中から出てきたのは、言わずもがな。
政宗である。
いつものようにぐいーっと伸びをして縁側に出てきた。

その姿をとらえると、無意識に顔がゆるんでしまう。

パタパタと走り寄り、縁側から下りてきた政宗に抱き付く。

「政宗さま!」

「おっと・・・!なんだ、今日も待ってたのか?

言いながらの頭を撫でる政宗。
は気持ち良さそうに、政宗の胸に頬をすり寄せる。

「お仕事、今日は終わりですか?」

「んー・・まあ、だいたいな。」

だいたい・・・

そういう時は夕方まではかかる仕事。

また、夕食の時まで一人・・・・・

「・・・・」

抱き付いたまま何も言わないに、政宗は首をかしげる。

?・・・・どうした?何かあったのか?」

「・・・・・政宗さま・・・」

「ああ。なんだ?」

「・・・・・・・・お仕事、しちゃヤダ・・・・」

「は?・・・なんだって?」

言葉にすれば、それは一気に心を占める。

寂しい・・・

きゅうっと胸が痛くなる。
政宗の胸元に、頬を擦りつけて甘える。

もっと一緒にいたい・・・

少しの沈黙の後、頭上からクスッと声が聞こえた。
ふわりと体を抱き込まれる。

「どうした、急に甘えて。」

そっと政宗の手がの顔を上向かせる。
そこには顔を赤らめ、口を尖らせて、拗ねたようなの顔があった。

「ん?言ってみろ、?」

「だって・・・・・」

「だって?」

「・・・だって・・・・最近ぜんぜん・・・一緒にいられないから・・・・」

「・・・・And, what(それで)?」

政宗はニヤリと笑って、先を促す。

「今日は一緒にいたいです・・・」

政宗はフッと笑って、ちゅっと額に口付ける。

「Ok。今日はもう仕事は終わりだ。」

「へ!?い、いいんですか?」
そんなあっさり・・・

「素直に甘えた褒美だ。」

政宗はそう言って、の唇を自分のそれで塞ぐ。

「んっ・・・・・」

ちゅっといって、互いの唇が離れる。

「・・・・・政宗さま・・」

「Ah?」

「・・・・・」

じっと見つめてくる目を見れば、政宗にはの思っている事なんかすぐにわかってしまう。
わかっていても、言葉にしてほしい。

「ちゃんと、甘えろよ。言葉にしてな。」

そう言うと、は顔を真っ赤にして、“もう一回キスしてほしい”と言った。












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