共通お題・甘えてもいい?
風が柔らかく吹き、外の緑をかすかに揺らす。
常世の国は夜の帳に包まれていた。
寝静まった城を、夜番の者たちだけが警備に当たっている。
湯からあがった千尋は、一人で寝室にいた。
手には中つ国から届いた手紙を持ち、大きなベッドの端に腰かけて読みふけっていた。
手紙の内容は、微笑ましい最近の出来事から仕事のことまで、風早が事細かに記してくれたものだった。
クスクスと笑いながら二枚目をめくると、ガチャ、と部屋の扉が開いた。
アシュヴィンが湯殿から上がってきたようだった。
「アシュヴィン。今ね、風早からの手紙を読んでたの―・・・」
言いながらアシュヴィンの方を見る。
「そうか。」
答えながらアシュヴィンは、ベッドから少し離れた大きなソファに腰を下ろす。
「・・・・・・」
千尋はというと、
アシュヴィンの姿に見とれていた。
普段の服とは違う、少し薄めの寝着に身を包み、
胸元が大きく開いたそれからは、湯上りのせいか少し火照った胸が見えて、男の人なのにすごく魅力的に見える。
濡れた髪は編み下げがほどかれていて、いつものアシュヴィンではないようだった。
何度も見ている姿・・・。
のはずなのに、ドキドキと早鐘が打ち始める。
なぜだか体中が熱く感じられた。
しばらくぽ〜っと見ていると、視線に気付いてアシュヴィンが振り向く。
「どうした、千尋?」
「え、あ!ううん!なんでも―・・・」
急に振り向いたアシュヴィンに、顔を赤くして俯く。
その反応の意味がわからなくて、アシュヴィンは首をかしげる。
「・・・千尋。」
呼ばれて顔を上げると、アシュヴィンが手招きをして、それから自分の足と足の間を示す。
ここに来い、という意味だとすぐにわかった。
手紙を持ったまま、千尋はアシュヴィンの足の間に腰かける。
座ると同時に後ろから抱き締められた。
「ア、アシュヴィン?」
「・・・・いい匂いがするな。」
千尋のおなかのあたりに腕をまわし、右側の首元に鼻を押し当てる。
一気に千尋の体温が上がる。
「ちょっ――っ・・・」
「何が書いてあった?手紙は。」
耳に直接、声を吹き込んでくる。
息がかかって、千尋の肩がぴくっと反応する。
「んっ―・・・えっと・・、仕事の、こととか・・・」
「うん?」
「皆のこと・・・とか、・・・」
ふーん、と言ってアシュヴィンは抱きしめる腕をさらに強くする。
いつのまにか胸の辺りを抱きしめて、体を密着させている。
まるで、すがるように千尋を抱きすくめ、
それから、かぷっと千尋の首を甘く噛む。
「うんっ、アシュヴィン?」
「ん?」
アシュヴィンは平然と答えながら、今度は噛んだ場所を強く吸う。
「ん、・・・どうしたのアシュヴィン?なんか今日は・・・・甘えんぼみたい・・・」
その言葉にアシュヴィンの動きが止まる。
「・・・・・」
急にとまったアシュヴィンに、振り向く千尋。
「・・・?」
見るとその顔は面白そうに笑んでいた。
「甘えんぼか・・・・この俺がな・・・。」
クスクスと笑うと、アシュヴィンは千尋の唇を奪う。
ばさっと手紙が落ちる音がする。
息が苦しくなってきたところで放してやると、千尋がうっとりと見上げていた。
「たまにはこうゆうのもいいだろう。」
「?なに・・・?」
「今夜は―・・・」
―甘えてもいいか?
アシュヴィンはひょい、と千尋を抱きあげてベッドに向かう。
夜の帳が二人を包み、甘い香りが朝をいざなう。
今はまだ、甘い夜が始まったばかり。